先週の天草大会に続き2連戦となるアジアカップ蒲郡大会に出場しました。地元愛知のレースで、学生時代から今まで幾度となくお世話になってきた大会です。大学1年の時に初めて出た51.5km公式戦。初めてのワールドカップ出場も蒲郡大会でした。自分にとって大変思い入れのある大会です。今年は、お隣の岐阜県で9月に開催されるぎふ清流国体愛知県代表選考レースにも指定されています。今シーズン、ショート1本に絞って専念すると決めたのは、年齢的にも国体を狙うのは最後のチャンスかもしれない、という気持ちがあったことも大きな理由の一つでした。国体代表の座を争う最大のライバルは、シドニーオリンピック代表で、過去2回国体愛知代表になっている同年代(1コ下)の福井英郎選手(トヨタ車体)です。福井選手とは、18、19のジュニアの時代から、今まで何度もレースで戦ってきました。昨年からミドル・ロングへと主戦場を移してはいますが、まだまだその力は衰えていないプロの中のプロ選手です。自分に勝つチャンスがあるとすれば、スイム、バイクを同時に終えてのラン勝負。それでも勝てる可能性は2〜3割くらいだろうとみていました。
(以下、写真は自然整体院エイド・ステーション院長増田和幸さんより頂きました)
レース当日、男子エリートのスタートは12:45と遅い時間帯でしたが、エイジ部門に出場される方の応援のため、8時前に現地に入りました。みんなのスタートを見届けてから、テントで横にならせてもらいました。朝の時点ではまだ疲労が残っており、少しでも横になって体を回復させることに専念しました。1時間半くらいうとうとして、女子のエリートのスタート時刻(11:20)に少しずつ体を動かして、目覚めさせていきました。バイク、ランと軽く動いてアップをしてみると、かなり身体が軽くなっており、ぎりぎりスタートに間に合ってくれました。起床時は体が重く、一度朝寝することで調子が良くなるというパターンは、何年か前の日本選手権でも経験しており、朝調子が悪くても、焦ることはありませんでした。スイムのウォーミングアップ前に、エイド・ステーションの増田院長に最終調整をして頂きました。アップで泳いでみると、かなり感覚が良く、今日はいけそうだ、という手ごたえを感じることができました。
レースナンバー順にコールされ、ポンツーン上にあるスタートティンググリッドを選択していきます。自分は32番でした。真ん中やや右側の福井選手の横を選択しました。スタートからマークしていく作戦です。スタートはいったん入水してからのフローティングスタート方式。いつスタートの合図があるかわからないので、いつでも出れるように準備をしておきます。ホーンの音でスタート!すぐに福井選手の後方につきます。その横のオーストラリア勢もスイムが速いので、外側の集団にうまく乗って、イン側の集団の前に出て、第1ブイを回れるように必死に腕を回して集団についていきます。集団真ん中あたりで、第1ブイ、第2ブイを回りました。まずまずの出だしです。湾内は風の影響で小さな波が立っており、とにかく大きいリカバリーと速いストロークを心がけます。750mでいったん上陸。ポンツーンからダイブします。前方を確認すると、やはり全体の真ん中、第3集団あたりの位置のようです。この位置では前の上位集団には入れません。もうひとつ前の集団につかなくては、勝負にならないと思い、ブイを回る度にギアチェンジしていきます。集団は縦長になっているので、集団の先頭でブイを回れば、後ろを引き離し、逆に前に追いつくこともできます。10mほど先には、前の集団が見えています。ここはラストチャンスと、集団の先頭に出て、猛ダッシュをかけ、一気に追いつきます。最後のブイをターンするときにようやく前方集団に追いつきました。そして上陸。すぐ前には福井選手、佐藤治伸選手(日本食研)が見えます。トランジションまでは340mのショートラン。ここは1秒を争う全力勝負です!とにかく前へ!!
トランジションをスムースにこなし、バイクスタート。バイクの強い福井選手、佐藤選手を絶対に逃さないように、まずはバイクシューズを履く前に、後ろにつきます。ある程度落ち着いたところで、シューズを履き、ローテーションに加わります。メンバーは、福井選手、佐藤選手、椿浩平選手(チームブレイブ)、古谷純平選手(早稲田大学)と自分の5名。どの選手も日本選手権トップ10レベルの力のある選手です。折り返しで前との差を確認すると、前にはオーストラリアヤングガンズチームを中心とした海外選手と日本人3名を含む12名ほどの大集団。その更に前に二人の海外選手が逃げていました。自分たちの後ろには日本人選手のメインパックが数秒差で迫ってきていました。しかし、自分たちの集団は前を追うという意志統一がされており、福井選手、佐藤選手の引きが非常に強く、後ろの集団を切り離し成功。逆に前の大集団との差は、じわじわとつまっていきました。ほどなくして、前から海外選手2名が落ちてきましたが、集団のローテに加わらず、そのまま千切れていきました。自分は前半はローテに加われていましたが、中盤から前に出ることができなくなり、ついていくので必死になってしまいました。バイクコースは5km×8周回で、1周回につき、Uターンが5か所もあるという超テクニカルコースです。Uターンの度に減速、加速を繰り返し、脚が削られていきます。集団最後尾にいると、立ち上がりで離されるので、非常にリスキーでしたが、前に出れないのに中途半端に前についてしまうと、他のメンバーに迷惑をかけることになってしまうので、集団から数m間隔をあけての後方待機に徹しました。
ラスト2周の時点で前の大集団を捕えることに成功しました。15名の第2集団となり、ペースは落ち着きました。更に前に2名逃げているはずですが、姿は見えません。最終周、あと2kmほどというところで、福井選手がパンクし、集団から遅れていきました。本当にレースは何が起こるかわかりません。フィニッシュまでは、あと少しなので、パンクしたままでも十分走りきれるだろうと思い、福井選手に「気を付けて」と声をかけ、バイクフィニッシュ。さあ、ここからが勝負です。
バイクで脚を酷使したため、足取りは非常に重く、集団の最後尾での16位でのランスタートとなりました。しかし6月とは思えない暑さで、粘れば前から落ちてくるはずと信じて自分のピッチを刻みます。
ランコースは1周2.5km×4周回。1周目、2周目はとにかく動かない足を引きずるようにして、前に前に気持ちを向けて走ります。前の選手もなかなか落ちてきてくれません。後方からは福井選手のプレッシャーが徐々に大きくなってきます。前から落ちてきたオーストラリア人と、遠藤樹選手(チームケンズトライアスロンスクール)をかわして、2つ順位を上げましたが、3周目の折り返し手前で、後続集団から追い上げてきた高濱邦晃選手(チームフォーカス・門司地産)にずばっと抜かされました。そのすぐ後ろには福井選手が・・・!残り3kmの地点で並ばれ、前に出られました。もちろん必死に抵抗を試みます。後ろについてピッチを合わせて、食らいつきます。しかし、じわじわと離されていきます。やはりだめか・・・・。気持ちが切れかけたそのとき、チームマネージャーIslandさんから目の覚めるような檄が飛んできました。「諦めるな!ここは絶対に食らいつけ!もう一度チャンスはくる!!」
「そうだ、あきらめるな・・・チームを引っ張る自分が諦めてどうする!チャンスは絶対にくる!」と自分に喝を入れ、リミッターを解除。最後の折り返し地点(フィニッシュまで1.2km)で、一気に差を詰めて、ロングスパートに掛けました。「これでついてこられたら、自分の負けだ、ついてこれるならついてきてみろ!!」と。そこからラストのフィニッシュまで力を緩めることなく、無我夢中で走りました。たくさんの応援に背中を押され、倒れこむようにフィニッシュ。福井選手とは20秒ほど差がついていましたが、自分のすぐ後ろには外山高広選手(東京ヴェルディ)が10秒差まで迫ってきていました。渾身のラストスパートで力を出し切っていなければ、おそらく抜かれていたでしょう。結果は12位で愛知県勢トップ。展開にも運にも恵まれ、最後はみんなの応援に背中を押されて、目標としていた国体代表の権利を掴みとることができました。何より、ここまで自分の力を惜しみなく出し尽くすことができたのは、最大のライバル、福井英郎選手のおかげです。
本当にきつい局面において、弱い自分を信じることはとても難しいことです。そんなときに自分を信じて、声をかけてくれる仲間、サポーターの皆様の応援の力とはこれほどまでに大きなものなんだ、ということを自分自身が身をもって再確認することができました。35歳となった今の自分には、スピードもタフネスもありません。しかし、どんな状況においても、最後まで諦めないという気持ちだけは持ち続けて、それをレースでは全身で表現する。それこそが、「あすたま」=「アスリート魂」であり、自分を応援してくださる方や、若い選手に伝えたいことです。チームあすたまは、ここからスタートします。まだまだ未熟なチームですが、皆さんの応援を力に、いつかは日本一になれるように精進していきます。今後とも応援よろしくお願いします!
レース後、チームあすたまの発足報告会を開きました。皆に感謝!!
身体のケアをサポート頂いているエイド・ステーション増田院長を囲んで。
最後になりましたが、大会を陰で支えてくださったボランティア、運営スタッフ、マーシャルの皆様、素晴らしい大会をありがとうございました!
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